あの日の約束を守り懸命に生きてきた娘。娘を捨ててでも自分らしく在ることを求め異国の地で生きてきた母。 母に捨てられた娘と、娘を捨てた母、二人の思いは、思い出のピエタ像の前で慈悲の心を通わせたとき、複雑で繊細な娘と母の心情、また婚約者や祖父への思いが絡み合う…演技派女優ふたりの壮絶バトルにご期待ください
1980年代後半—。30歳になる永井友子は大学を卒業後、大手出版社で人気女性誌の副編集長を任せられていた。友子の母は24年前、駅で友子を捨てたきり、音信不通のままであった。母が残した『いい子でいれば、帰ってくる』という言葉を信じて努力を重ね、友子は優等生となった。再婚した父に気を遣って大学進学を機に自立し、唯一の味方であった祖父が他界したあとも友子は「いい子」でいつづけてきた。しかし母がいつまでも戻って来ないことに心を蝕まれ、自分の中に隠しようのない歪みを自覚した友子は、ついに消息不明の母を探し出したのだった。友子の母はイタリアで観光ガイドとして働いていた。友子は、母の目の前で優等生の自分自身を壊すために、愛していない男を「婚約者」に仕立て上げ、イタリアへ向かうのだった。
〒106-0032 東京都港区六本木4-9-2
TEL. 03-3470-2880
ミュージカル「ピエタ」に寄せて
尊敬する芸術家を問われたなら、私は迷うことなくミケランジェロ・ブオナローティの名を挙げるだろう。
一九九七年に書いた短篇小説「ピエタ」は、文字通り彼へのオマージュである。
サンピエトロのピエタの美しさに陶然とし、フィレンツェとミラノのピエタに戦慄した経験は、先人たちのどの小説にもまして私の作家人生に影響を与えたと思う。
このたび私の「ピエタ」がミュージカル化されると聞いて驚いた。五百年後の小説家が勝手に書いて、「ピエタ」の足元に捧げた話が、さて、天国のミケランジェロは何と言うだろうか。
何かをつくったり、目標に向かったりするとき、誰かに見せたくて、その人に認めてほしくて頑張るということが誰にでもあるのではないでしょうか。私の場合、長い間それは母でした。だから原作の小説を読んだとき、友子が母を求めて頑張り続けたその想いに、当初は直視できない痛みを感じました。友子の気持ちを解きほぐしながらミュージカル化する作業は、自分の痛みを見つめる時間でもありました。友子の母への想いはどういう形で届くのか、何が友子の心の欠落を埋めるのか……。魅力的なスタッフ、キャストの皆さんと共に舞台作品として表現できればと思っています。
プロフィール
脚本、作詞、訳詞家。東京都出身。劇団フォーリーズ(現ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ)出身。訳詞を務めた主な作品に「メリー・ポピンズ」「デスノート THE MUSICAL」「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」「ジャージー・ボーイズ」「ヘアスプレー」「オリバー!」ほか多数。台本の翻訳も多く手掛けている。オリジナル作品に「フィスト・オブ・ノーススター」「SERI」などがある。第14回小田島雄志・翻訳戯曲賞を受賞。今最も海外ミュージカルの翻訳、訳詞を手掛けるクリエイターの一人。イッツフォーリーズでは、「ママったらわたしのなまえをしらないの」「MIRACLE」「霧のむこうのふしぎな町」などの脚本を担当。
バブル期の東京。24年間果たされなかった母との約束に決着をつけるため、ローマへ。必死に生きて、想いを綴ってきた母娘の凄まじい想いが積み重なっていく本作。
浅田次郎の傑作短編小説から、魂を削って言葉を紡ぎ出す高橋亜子さんによってミュージカル版「ピエタ」が姿を表し、小澤時史さんと田中和音さんの音楽で翔くこの新作に挑むのが待ち遠しいです。魅力的なキャスト、スタッフ陣と共に、一丸となってミュージカル「ピエタ」に命を吹き込みます。劇場で意欲作の誕生を体感して下さい。
プロフィール
全米演出家振付家組合準会員。 ブロードウェイ版「アリージャンス」の演出家奨学生に選出され、演出助手を担当。
ブロードウェイ版「ウェイトレス」、リンカーンセンターコンサート版「秘密の花園」にも携わり、China Broadway Entertainment / Broadway Asia「Neverland: The Peter Pan Immersive Entertainment」NYトライアウト公演、北京公演の演出助手を務める。 近年の日本での演出作品は、 ブロードウェイミュージカル「THE WIZ」、「FAME」、国際共作ソングサイクル「WeSongCycle」、作・演出ミュージカル「KAGUYA織り成す竹取物語」など。イッツフォーリーズ作品では、ミュージカル「遠ざかるネバーランド」の演出を行う。
今回この作品の作曲のお話をいただいた時、スケジュールの事もありなかなか難しいなと思っていましたが、プロデューサーの熱意もあり田中さんと共作という形で参加させて頂くことになりました。私は作曲家いずみたくの楽曲に触れて、今の自分の作曲スタイルが明確になったと思っています。「メロディ」という大きな軸をこだわって作り、そこから和音やアレンジを考えていく。何よりもメロディをしっかり書くことが歌の多いミュージカルではとても大切だと考えています。劇場にはどんな空間が広がるのか、今からとても楽しみです。そして2人の楽曲が作品を彩る事が出来たらと願うばかりです。
プロフィール
東京音楽大学作曲科卒業。自身の作曲したミュージカル「Count Down My Life」がニューヨーク国際フリンジフェスティバルの海外招聘作品に選出。ニューヨーク、オフ・ブロードウェイでの公演を果たしEnsemble賞を受賞。主な作曲作品に宝塚歌劇団月組「グレート・ギャツビー」TipTap「フリーダ・カーロ」、音楽監督として「アニー」「笑う男」「ボディガード」「マタ・ハリ」などに参加。イッツフォーリーズ、オールスタッフプロデュース作品では「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「獅子吼」「魍魎の匣」などのミュージカルをはじめライブやコンサートでも作曲や演奏などで携わっている。
揺れ動く繊細な感情を音楽でどう表現しようか、と試行錯誤の日々でした。様々な想いの重みを表現しつつ、それでいてメロディは印象的に、ということを目指して曲を書いていきました。また、今回は小澤時史さんとのダブル作曲体制。二人の色を強引に揃える必要はないと思いましたが、極端にテイストが違うのは……と考えながらの作業は新鮮で楽しくもありました。素晴らしいキャスト、スタッフの皆様とともにここからさらに創り上げていきたいと思います。
プロフィール
大阪芸術大学で、前田憲男に師事。ピアニストとして参加したバンドが横浜ジャズプロムナードにおいてグランプリを受賞。作編曲家としては、ビッグバンド編成の編曲を数多く手がけるほか、管楽器愛好家に人気の「めちゃモテ・シリーズ」や合唱譜を中心に出版多数。主な音楽担当作品に2018年 ミラノ国際映画祭 ベストサウンドデザイン部門にノミネートされた映画 「ばぁばは、だいじょうぶ」、映画「キセキの葉書」、劇団青年座「眞田風雲録」、ミュージカル・ギルドq.「BRAVE HEART 〜真実の扉を開け〜」など。イッツフォーリーズ公演ではミュージカル「バウムクーヘンとヒロシマ」の作曲のほか、演奏として多数の公演に参加。
今回振付を担当させて頂きます、原田薫です。いよいよ、キャストも決まり、脚本、楽曲が次々に上がってきて、ピエタの物語が明らかになってきました。ここから演出の渋谷さんとセッションしながら、時に大胆に、時に繊細に、キャッチーな部分も取り入れつつ、見ている人の想像力を掻き立てる様なシーン作り、振付をしていきたいと思っています。東京、ローマを舞台に、時を超えて描かれる親子の物語。大切にお届けします。
プロフィール
5歳よりバレエ、16歳でジャズダンスを始める。アグレッシブでテンポ感があるものから、ムーディなものまで、ステージのカラーを幅広く引き出す振付が魅力であり、ドラマ性豊かな舞台創りをあらゆるジャンルで積極的に取り組んでいる。自身の公演では「モノクロームRevival」(主演・振付)、「BIG 4 SHOWCASE 」(出演・振付)、「ASTERISK 女神の光」(出演)など。主な振付作品に「スーザンを探して」「TALK LIKE SINGING」「国民の映画」「GOLD」「こうもり」「THE CONVOYSHOW」「ワンダフルタウン」「DREAM TRAIL」、劇場版「BLEACH」、映画「任侠ヘルパー」、映画「清須会議」など。
プロフィール 1989年1月3日、福岡県生まれ。2006年、第2期AKB48追加メンバーオーディションに 合格。NMB48での活動を経て、10年間所属したAKBグループを2016年に卒業。 2014年に出演したブロードウェイミュージカル「IN THE HEIGHTS」への出演をきっかけにミュー ジカルに目覚め、宮本亜門演出のミュージカル「ウィズ〜オズの魔法使い」のAKBグループ・メン バーオーディションで主人公・ドロシー役に選出。グループ卒業後も多岐にわたる活躍を続け、舞 台「Endless SHOCK」では2019年より3年連続ヒロインのリカ役を務めている。 最近の主な舞台出演作にミュージカル「スワンキング」コージマ役(2022)、オリジナルミュージ カル「りんご」木村ミチコ役(2022)、「銀河鉄道999 THE MUSICAL」クレア役(2022)、 舞台「刀剣乱舞」愚伝 矛盾源氏物語六条御 息所役(2023)など。
ミュージカル「ピエタ」に出演させて頂きます、梅田彩佳です。台本を読ませて頂いた時、なんてリアルで繊細な話なんだろうと、胸がギュッとなりました。触れてしまったら壊れてしまいそうな、そんな繊細な心の動きを丁寧に、そして大胆に演じさせていただけたらと思っています。新しい私も見せられるように、そしてこのお話を素敵なキャスト、スタッフの皆さんと作り上げていける過程を楽しみにしています。ぜひ皆様お越しください。 よろしくお願い致します!
プロフィール 大学在学中に早稲田演劇研究会に所属。卒業後の1983年に劇団遊◉機械/全自動シアターを結成。少年少女から老人まで変幻自在に人物を演じ注目される。中でも少年役の「山田のぼる」が人気となり1993年には「ポンキッキーズ」でMCを務める。舞台の本も手がけ、1994年「ラ・ヴィータ」で文化庁芸術祭賞を受賞。レストランの話をジャズの生演奏と繰り広げる「ア・ラ・カルト」は1989年の初演から30年を超えるロングラン公演となる。2003年劇団解散後、村上春樹の短編を英国の演出家と舞台化した「エレファント・バニッシュ」に出演。ロンドン、パリ、ニューヨーク公演で世界的評価を得る。NHK「週刊こどもニュース」やNHK-BS2「週刊ブックレビュー」NHK-BS2「ミッドナイトステージ館昭和演劇大全集」では司会も務める。2013年パルコ劇場40周年記念公演「ホロヴィッツとの対話」、「ア・ラ・カルト2」で読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。
浅田次郎の短編小説「ピエタ」をミュージカルでやると聞いたとき、何故ミュージカル?と最初に思いました。 日本のミュージカルということにこだわって長年作品を創り続けてきたこと、そして今、母と娘のドラマ「ピエタ」に挑みたいということ、話の中でその思いが伝わってきました。この歳でミュージカルに出演するとは思ってもみなかったこと。「ピエタ」に潜む作品力が、自分に潜んでいる表現力がまだあったなら、見いだしてくれるのではと願っています。
ミケランジェロは「私は大理石の中に天使を見た。そして天使を自由にするために彫ったのだ。」という言葉を遺しています。我々俳優も、自分自身の役を、そして相手役を、さらにはお客様を「自由」にするために、演じます。本作の中で、リーは「自由」ではないかもしれません。ですが、彼は、友子を「自由」にするために、そのためだけに存在しているのかもしれません。そうしたがっているようにも、僕には見えました。彼を演じることは、とても光栄で遣り甲斐に満ち溢れています。
プロフィール 1984 年 3 月 25 日生まれ、神奈川県出身。2003年に小劇場を中心に活動開始。主な出演作品に、舞台『~崩壊シリーズ~』、斬劇『戦国BASARA』シリーズ、『黄昏』、『ミュージカル ふたり阿国』、音楽劇『モンテ・クリスト伯』、ミュージカル『僕とナターシャと白いロバ』、舞台『象』、Musical『SMOKE』などがある。ストレートプレイからミュージカルの出演など多才な才能を活かし、幅広く活動している。
新しいミュージカル作品が創られていくその瞬間を体験することは、ミュージカル俳優を続ける上で何にも代え難い喜びです。 そして同時に大きな緊張を感じています。原作に描かれるイタリアと日本の空気のコントラストや親子の葛藤をミュー ジカルというフィルターを通してどう形作っていくのか? リー・イン役にどれだけ説得力を持たせることが出来るのか、大きな挑戦の日々になると思っています。
プロフィール 1984年6月29日、神奈川県出身。2007年に「ホンク!」で俳優デビュー。2008年にオーディションにて「ミス・サイゴン」のトゥイ役に抜擢され、その後はミュージカルを中心に様々な作品に出演をしている。近年の主な出演作に、舞台「スクルージ」(トム・ジェンキンス役)、「ミス・サイゴン」(トゥイ役)、「遠ざかるネバーランド」(少年役)、「ナイツ・テイルー騎士物語ー」、「屋根の上のヴァイオリン弾き」(フョートカ役)など。今年は「ジェーン・エア」、「スクールオブロック」に出演予定。
『ピエタ』、浅田次郎さんの珠玉の短編です。今まで様々な形で上演されて来ましたが、初のミュージカル化。娘と母親の愛憎と葛藤の物語の中で、僕は主人公友子の祖父を演じます。さて、どんな風にクリエイティブできるのか今からワクワクしております。また、初めましての方々ばかりなので、新たな仲間との出会いも楽しみで仕方ありません。素敵な作品となるよう、一丸となって頑張る所存です。どうぞお楽しみに!
プロフィール 1966年生まれ。青年座研究所を経て入団した音楽座解散後はミュージカル、舞台、ドラマ、吹き替えなどで幅広く活躍を続ける。97年、主演したNHKドラマ「銃口」で第23回放送文化基金賞男優演技賞を受賞。「魔法にかけられて」「塔の上のラプンツェル」など多くのディズニー作品で吹き替えを担当している。近年の主な出演作に、【舞台】『人形の家』『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』『The View Upstairs』『October Sky-遠い空の向こうに』『家族のはなし PART1 2021』『シャボン玉とんだ 宇宙までとんだ』『ジャージー・ボーイズ』『グレート・ギャツビー』『スクルージ〜クリスマス・キャロル』『ニュー・ブレイン』『詩人の恋』などがある。